【AIR】2025年1月-3月 広野アーティスト・イン・レジデンス参加記録

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2025年1月から3月にかけて、福島県広野町で行われた広野アーティスト・イン・レジデンス2025「日之出の松」プロジェクトに参加しました。広野町に滞在し、町の方との交流をはかりながら制作やワークショップを行い、保育園や切り絵教室なども訪問させていただきました。レジデンス終盤には滞在の成果としての展示を行いました。

レジデンスのテーマ

今回参加したレジデンスのテーマは、広野町に伝わる「日之出の松」の伝説を手がかりに、この土地の歴史や記憶に触れることでした。そのテーマをもとに、それぞれのアーティストが滞在制作やリサーチを行うプログラムでした。

このテーマを受け、私は滞在中「この土地にどう関わるか」「よそ者としてどうここに居るか」という問いなどが浮かんできました。自分の制作のスタイルも広野町の人たちと触れ合うことで、人との関わりの中から制作の手がかりを探すやり方のほうが、私らしい作品が出来上がるのかもしれない、という気づきがありました。

作品の完成だけでなく、滞在のプロセスそのものも私にとって作品の一部になるんだと感じました。

滞在の中で考えたこと(シビックプライドとの出会い)

滞在中、町の方の話を聞く中で、震災の話題に触れることがありました。「覚えているし、話せるけれど、思い出さないようにしているところがあるかもしれない」と聞いたとき、「知らない土地に来た自分が、こうした話を聞いて、作品にしていいのだろうか」と強い違和感を覚えました。

その後、広野町のコミュニティースペースを運営している方達との出会いがありました。このレジデンスで大変お世話になった方で、「シビックプライド」という考え方を教えてもらいました。その土地に生まれていなくても、専門家でなくても、関わっていく中で、その場所に愛着を持つ、という考え方です。

この言葉を知って、「よそ者だから何も語れない」と構えすぎていた自分の姿勢が、少しだけ緩み、この町に関わること自体を、まずは自分なりに感じてみよう、と思えるようになりました。

他のアーティストとの出会い

同じ時期に参加していた2人のアーティストの存在にも、滞在中とても支えられました。アートに対する向き合い方や考え方が自分とはまったく違い、自分の知らなかった視点や姿勢に触れられたことは、大きな学びでした。

3者3様のスタイルで制作していたからこそ、「私は私のやり方でいいんだ」と思えた部分も大きく、このレジデンスで他のアーティストと出会えたこと自体が、自分の制作にとって大切な経験になりました。

お披露目会・展示

滞在中には、制作途中の作品を公開するお披露目会を行い、来てくれた方と話しながら、自分の制作や受け取り方について言葉にする時間を持ちました。その後、滞在の成果として展示を行いました。

完成した作品だけでなく、そこに至るまでのプロセスや迷いも含めて共有できたことが、今回のレジデンスならではの経験だったように思います。

振り返り

このレジデンスは、作品を完成させる場であると同時に、自分の制作スタイルや、人や土地との関わり方を改めて考える時間でもありました。

はっきりとした答えが出たわけではありませんが、「わからないまま考え続けること」や、「人と関わりながら形を探すこと」が、自分の制作の軸の一つになっていることを、あらためて実感する滞在になりました。